
タイヤの過積載のリスクとは
農業用タイヤの過積載のリスクと回避方法
農業用車両のタイヤに関するさまざまなガイドは、以下からご確認いただけます。
農業用タイヤの過積載とは?
農業用タイヤには、それぞれ「最大でどれだけの荷重を支えられるか」を示す荷重指数が設定されています。しかし、たとえ高い荷重能力を持つタイヤであっても、あらゆる条件下で同じ性能を発揮できるとは限りません。
特に注意が必要なのは、走行速度が速すぎる場合や、空気圧が不十分な場合です。これらの条件が揃うと、タイヤは設計以上の負荷を受けてしまい、農業用タイヤの過積載につながるリスクがあります。
農業用タイヤと「荷重・速度・空気圧」の関係
農業用タイヤの荷重・速度・空気圧の3要素は密接に関係しており、このバランスが崩れると過積載のリスクが生じます。
ここでは、MICHELIN MACHXBIBタイヤ(サイズ:710/70R42 173D)を例に解説します。
■例1:空気圧と荷重の関係
製品データによると、空気圧が2.0bar(200kPa)の場合、50km/h以下の速度であれば、最大6,355kgの荷重に対応可能です。

MICHELIN MACHXBIB:荷重/空気圧/速度比
一方で、空気圧を1.6bar(160kPa)に下げた場合、同じ速度では5,880kgまでしか運搬できません。それ以上の荷重がかかると、タイヤは過積載状態となります。
■例2:速度と荷重の関係
同じ空気圧1.6bar(160kPa)の場合でも、速度を10km/h以下に抑えることで、最大7,380kgの荷重に対応できます。

MICHELIN MACHXBIB:荷重空気圧速度比例2
しかし、これを40km/hで走行する場合、対応可能な荷重は6,130kgまでに下がります。空気圧を変えずに速度を上げると、過積載のリスクが高まるということです。
なお、耕うん作業など高トルクが求められる作業を行う場合は、30km/h以下を目安に使用しましょう。10km/hは低トルク作業専用の設定です。
荷重指数と速度記号の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
荷重を見積もり農業用タイヤの過積載を防ぐ
農業用タイヤの過積載を防ぐには、まず正確な荷重の把握が欠かせません。しかし、農業機械は作業内容や装着するアタッチメントによって荷重が変化するため、その見積もりは容易ではありません。
たとえばトラクターの場合、用途に応じて異なる作業機を取り付けることが多く、想定される最大荷重を見極める必要があります。
この課題をサポートするために、ミシュランタイヤは「MICHELIN AGROPRESSURE(ミシュラン アグロプレッシャー)」というオンラインツールを提供しています。このツールを使えば、農作業に応じた荷重や、それに適した空気圧を簡単に算出できます。過積載のリスクを避け、タイヤ性能を最大限に発揮するために、ぜひご活用ください。
農業用タイヤの空気圧管理の重要性
過積載を防ぐために、農業用タイヤの空気圧を適切に管理しましょう。
牽引するアタッチメントの重さに応じて、対応する最高速度を超えないようにしながら空気圧で調整する必要があります。
(1)荷重が重くなった場合
農機が牽引する作業機やアタッチメントが重くなると、それを支えるためにタイヤ内部の空気量を増やす必要があります。荷重を支えているのはタイヤそのものではなく、タイヤ内部の空気であるためです。
タイヤ内部の空気量を増やす方法は、以下のとおりです。
- タイヤの空気圧を上げる
- (例:空気圧200kPaは、160kPa時よりも重い荷重を支えることが可能)
- より幅広のタイヤを装着する
- 幅広でかつ直径が大きい(高さのある)タイヤを装着する
農業用タイヤを選ぶ際は、必要な荷重を支えられる仕様であることはもちろん、より低い空気圧で荷重を維持できる製品を選ぶことがおすすめです。
荷重性能を高める方法として、IF(Increased Flexion)またはVF(Very High Flexion)構造のタイヤを選ぶという選択肢もあります。ミシュランウルトラフレックステクノロジーを採用したVF(Very High Flexion)タイヤは、標準的な従来タイヤと比べて20〜40%の荷重能力の向上を実現します。*
関連ページ:トラクタータイヤの適正空気圧とは?
農業用タイヤの空気圧管理を怠るリスク
農業機械に新しいアタッチメントを取り付けた際に空気圧の調整を怠った場合、荷重・空気圧・速度比のバランスが崩れ、タイヤが過積載状態に陥るリスクがあります。その結果、タイヤの早期劣化やパンク、燃費の悪化など、業務にさまざまな悪影響を及ぼす恐れがあります。
(1)農地での作業
農地では、タイヤ空気圧が低すぎても高すぎてもリスクが発生します。
農業用タイヤの空気圧が不足している場合
- 効率の低下:空気圧が不足していると、農業機械の効率が低下し、作業時間が増加します。
- タイヤの劣化:低圧での走行は、タイヤ内部のカーカスを傷め、構造劣化や寿命の短縮を招きます。結果としてタイヤの早期交換が必要になり、コスト増につながります。

field low pressure
農業用タイヤの空気圧が過多である場合
- 損傷リスク増加:高すぎる空気圧は、タイヤの接地面積を減少させるため、切り傷やパンクのリスクが高まります。
- けん引力の低下と燃費の悪化:接地面が狭くなることでトラクションが低下し、スリップが増えます。土壌圧縮が進行するだけでなく、トラクターの燃費も悪化します。

field high pressure
(2)路上での走行
舗装路を走行する際、タイヤ空気圧が低すぎても高すぎてもリスクが発生します。
農業用タイヤの空気圧が不足している場合
- 安全性の低下:タイヤのショルダー部が過剰に摩耗し、カーカスの損傷や横滑りが発生しやすくなります。操縦安定性が損なわれ、安全性が損なわれる可能性があります。
- 燃費悪化:空気圧が低い状態で走行すると転がり抵抗が増し、燃料消費量が増加します。

field low pressure on the road
農業用タイヤの空気圧が過多である場合
- 不均一な摩耗:空気圧が高すぎるとタイヤの中心部にのみ荷重が集中し、中央部分の摩耗が進行します。
- 乗り心地と耐久性の悪化:乗り心地が硬くなり、地面からの衝撃を受けやすくなります。また、切り傷やパンクが起こりやすくなる点にも注意が必要です。

Over-inflated tyre on the road
関連ページ:トラクタータイヤの空気圧
まとめ
農業用タイヤにおいては、「荷重・速度・空気圧」のバランスを保つことが重要です。
農地で作業する際は、荷重に応じて農業用タイヤの空気圧を適切に調整することが重要です。空気圧が適正なタイヤは過度な負荷を受けず路面にしっかりと接地できるため、トレッド(ラグ)が土にしっかり食い込み、スリップを抑えて効率的に走行できます。タイヤ本来の性能を十分に発揮し、摩耗を抑えて寿命を維持することが可能です。
路上での走行においても、適切な空気圧で管理されたタイヤは、過積載を避けつつ快適性と安全性を確保できます。摩耗の進行も均一になるため、タイヤを長く使用できるでしょう。
* VF(Very High Flexion)タイヤ以外と比較した場合