
Agricultural tyre rotation for longer tyre life
農業用タイヤのローテーションでタイヤの長寿命化をサポート
農業用車両のタイヤに関するさまざまなガイドは、以下からご確認いただけます。
タイヤローテーションとは?
タイヤローテーションとは、車両の異なる位置に取り付けられているタイヤの装着位置を入れ替えることで、摩耗や機械的な負荷を均等に分散させる手法です。タイヤローテーションの実施により、タイヤ寿命を延ばし、性能をより長く維持することが可能です。
この記事では、どのような場面でタイヤローテーションが有効か、そして農業従事者にとってどのようなメリットがあるのかを詳しくご紹介します。
タイヤローテーションのケース1:トラクター
トラクターの場合、状況に応じて前輪タイヤを左右で入れ替えることで、寿命を延ばすことが可能です。頻繁に道路を走行するケースでは、タイヤローテーションが特に効果的です。
たとえば日本のように自動車が左側を通行する国では、一般的に左側のタイヤのほうが右側のタイヤに比べて摩耗しやすい傾向があります。排水を促進するために、道路がわずかに傾斜していることが多いためです。
道路のわずかな傾斜により、運転者はトラクターが路肩に寄りすぎないようにハンドル操作で微調整しなければならないケースは珍しくありません。このような操作の繰り返しはトラクタータイヤの偏摩耗につながり、特に左側タイヤの外側トレッドが早くすり減ってしまいます。
道路を頻繁に走行し、片側タイヤの著しい摩耗が見られる場合、前輪タイヤの左右を交換(左右の位置の入れ替え)することで、摩耗を均等に分散させることが可能です。

Tyre rotation on tractors
タイヤローテーションで均等なタイヤ摩耗を促すことでタイヤの寿命が延び、早期のタイヤ交換を避けられます。また、均一な摩耗によって走行中の振動や騒音が軽減されるため、運転者の快適性も向上するでしょう。
タイヤローテーションのケース2:ツイニング(複輪)
ツイニングとは、トラクターのタイヤを二重に装着する方式のことです。ツインタイヤ・ダブルタイヤ・デュアルタイヤなどと呼ばれます。主に農場で使用されるため、路上走行による負荷が少なく、摩耗も比較的緩やかになる傾向があります。
しかし一部の国や地域では、輸送作業時に外側のツインタイヤを取り外す運用が一般的です。内側のタイヤだけが長時間使用されることにより、内外で摩耗の度合いに差が生じ、摩耗の少ない外側のタイヤサイズの方が大きくなるケースがあります。タイヤサイズの違いはアクスル(車軸)に余計な負荷をかけ、トラクターの走行性能にも影響を及ぼす恐れがあります。
ツインタイヤの動作の効率性を確保するためには、4本すべてのタイヤの摩耗レベルを均等に維持することが重要です。定期的に内側と外側のタイヤを入れ替えるタイヤローテーションを行うことで、偏摩耗を抑え、タイヤの寿命を延ばすことができます。アクスル(車軸)への負荷を軽減し、トラクターの安定性と農作業時のけん引力を維持でき、燃料の節約にもつながります。
タイヤローテーションのケース3:大型の関節式トラクター
アメリカやブラジルでは、関節式トラクターに大型のツインタイヤ(ダブルタイヤ)が装着されていることが一般的です。
このタイヤの装着方法では、摩耗が偏りやすくなる傾向があります。特に車幅の広い関節式トラクターでは、外側の2つのタイヤが道路の端を通る際に地面に深く入り込みやすく、その部分に過度な負荷がかかることがあります。その結果、外側のタイヤのみが早く摩耗するケースが少なくありません。
このような場合は、内側と外側のタイヤを定期的に入れ替えるタイヤローテーションが効果的です。タイヤの摩耗の均一化を促すことで、タイヤ全体の寿命の延長が期待できます。
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タイヤローテーションのケース4:伸縮式フォークリフト
近年、農場で急速に普及している伸縮式フォークリフトは、荷役作業から道路輸送まで幅広く活用できる多目的な機械です。
中には、けん引用の連結装置(ヒッチ)を装着してわらなどを牽引し、公道を移動するケースもあります。そのため、農場だけでなく、道路の走行頻度も高くなりがちです。
また、荷役作業ではコンクリートやアスファルトなどの硬く研磨性の高い路面を走行することも多く、特に前輪のタイヤに大きな負荷がかかります。前輪は荷重の大部分を支えるため、摩耗が早く進行しやすくなります。

Tyre rotation on telescopic forklifts
なお、前輪と後輪のタイヤサイズは同じなので、前後のタイヤ摩耗に差が出始めた段階でタイヤローテーションを実施し、4本すべてのタイヤをより均等に摩耗させることが可能です。タイヤの寿命を延ばし、交換コストの抑制につなげられるでしょう。
タイヤローテーションのケース5:自走式スプレーヤー
自走式スプレーヤーは、最低地上高が高く、細身のタイヤを装着していることが多いため、前後にステアリングアクスルを備えているケースが一般的です。この構造により、車両のアライメント(車輪の整列)が乱れやすくなります。
公道で自走式スプレーヤーの後方を走行する際に、4輪が完全に平行ではないことに気づくこともあるでしょう。時間の経過とともにアライメントがわずかにずれていけば、不規則なタイヤ摩耗を引き起こす可能性があります。
このようなトラブルの対策として有効なのが、タイヤローテーションです。自走式スプレーヤーは4輪とも同じサイズのタイヤを装着するケースが多いため、タイヤの位置を交差させて入れ替えることが可能です。タイヤローテーションを行うことで、タイヤ摩耗の抑制につながります。
まとめ
タイヤローテーションは、摩耗の進んだタイヤの負担を軽減し、比較的摩耗の少ないタイヤをより多く活用することで、タイヤの寿命を延ばすために活用されている方法です。
ただし、タイヤローテーションを行う前に、不均一な摩耗が発生した原因を特定することが重要です。たとえば、ボールジョイントの摩耗などによってアライメントがずれている可能性があります。このような機械的なトラブルを放置したままタイヤの位置だけを変更しても、根本的な解決にはつながりません。
そのため、タイヤローテーションの前にアライメントの状態を確認し、車両に異常なガタつきがないかを点検することをおすすめします。