
タイヤの偏摩耗の原因は何でしょうか?
農業用タイヤの偏摩耗の原因は?確認方法や対策も紹介
農業用車両のタイヤに関するさまざまなガイドは、以下からご確認いただけます。
農業用タイヤの偏摩耗の確認方法
農業用タイヤには乗用車のような摩耗インジケーターは設置されていませんが、タイヤの偏摩耗をチェックすることは可能です。
まずは、農業用タイヤの正面から一歩下がって目視で確認する方法です。少し離れた場所からチェックすることで、「タイヤのどの部分が他と比べて顕著に摩耗しているか」を確認しやすくなります。
より正確に確認するには、タイヤ溝深さゲージ(デプスゲージ)を使って測定します。タイヤの片側にある隣接した2本のラグの上端からトレッドの底までの深さを測り、反対側でも同じように測定してください。トレッドの左右で測定値に差がある場合、タイヤの偏摩耗が進行しているサインです。
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タイヤの偏摩耗をどのようにチェックするか
農業用タイヤに偏摩耗が生じる4つの原因
農業用タイヤに偏摩耗が見られる場合、いくつかの原因が考えられます。ここでは、代表的な4つの原因について解説します。
(1)不適切な空気圧
タイヤの空気圧が適切でない場合、偏摩耗が起こりやすくなります。空気圧が高すぎたり低すぎたりすると、タイヤ全体に均一な荷重がかからず、一部に過度な摩耗が生じるためです。
偏摩耗の進行を防ぐためには、作業内容や積載荷重に応じた適正な空気圧を維持することが重要です。
空気圧が高すぎる場合
空気圧が高すぎるとタイヤが膨らみ、接地面が中央部分に集中します。その結果、トレッド中央部が早期に摩耗しやすくなります。

空気圧が高すぎることによるトレッド中央部の顕著なタイヤ摩耗
空気圧が低すぎる場合
空気圧が低すぎるとタイヤがたわみ、ショルダー(両肩)部分が早期に摩耗する傾向があります。

空気圧が低すぎることによるショルダー部の顕著なタイヤ摩耗
摩耗の重症度

摩耗の重症度
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(2)道路の影響
道路の影響で、農業用タイヤの偏摩耗が生じるケースもあります。
農道や公道の路面は完全な平坦ではなく、排水のために中央から左右にかけて、わずかに傾斜がついていることが一般的です。そのため、双方向に車線のある道路をトラクターで走行する場合、走行車線側のタイヤに偏った摩耗が生じることがあります。
たとえば「車両は左側通行」と定められている日本では、農業用車両は道路の左側を走行することが多いため、左側のタイヤが早く摩耗しやすくなります。逆に右側通行の国では、右側のタイヤが著しく摩耗しやすい傾向があります。
このような偏摩耗を抑えるための簡単な対策としておすすめなのは、摩耗が目立ちはじめた段階で左右のタイヤを入れ替える「ローテーション」です。定期的なタイヤ位置のローテーションが、偏摩耗の防止とタイヤ寿命の延長につながります。
(3)トレーラーの車軸のズレ
トラクターが牽引するトレーラーのアクスル(車軸)が正しく調整されていない場合、トラクタータイヤの前輪および後輪に「ドリフト摩耗」と呼ばれる偏摩耗が生じる可能性があります。
たとえば、右前輪タイヤの右側部分に摩耗が生じると、左前輪の同じく右側部分にも同様の摩耗が発生することがあります。結果的に、両方のタイヤの同じ側が早期に摩耗します。
このような現象が確認された場合は、トレーラーのアクスルアライメント(整列状態)を見直し、必要に応じて調整することが重要です。

両方の前輪タイヤの右半分にドリフト摩耗
摩耗の重症度

摩耗の重症度
(4)ジオメトリの問題
ジオメトリが正しく調整されていない場合、農業用タイヤに偏摩耗が生じる原因となります。ジオメトリとは、農業機械の「平行度(トー)」や「キャンバー(傾き)」といった車輪の取り付け角度のことです。
平行度(トー)のズレ
トラクターの前輪は操舵輪であり、耕作作業などで大きな応力を受けやすく、平行度のズレ(ミスアライメント)が起こりやすい構造です。たとえば、畑の溝に片輪がはまることで、前軸の調整が狂う可能性があります。
また、ミスアライメントは必ずしも古いトラクターのみに起こるわけではありません。工場出荷時のアライメントが、実際の使用環境に適していないケースがあるため、新しいトラクターにおいても注意が必要です。わずか数ミリのズレでも、タイヤの偏摩耗の原因になり得ます。
平行度に関連するミスアライメントは、主に「トー・イン(内向き)ミスアライメント」と「トー・アウト(外向き)ミスアライメント」という2つのタイプがあります。どちらのケースも、放置するとタイヤ寿命の短縮につながるため、異常に気づいた段階で調整を行うことが重要です。
トー・イン(内向き)ミスアライメント
トー・イン(内向き)ミスアライメントとは、2つの前輪がわずかに内側に向いている状態を指します。上からみた状態は、以下のとおりです。
後輪
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前輪
トー・イン(内向き)ミスアライメントは、タイヤのトレッドの外側部分が摩耗しやすくなることが特徴です。
道路の影響が加わると、路肩に近いタイヤの摩耗はさらに顕著になります。日本では左側通行のため、路肩に近い左側のタイヤに摩耗が集中しやすい傾向が見られます。

トー・イン ミスアライメントによるタイヤ摩耗。路肩に近い右側のタイヤで強調されている。
摩耗の重症度

摩耗の重症度
トー・アウト(外向き)ミスアライメント
トー・アウト(外向き)ミスアライメントとは、2つの前輪がわずかに外側に開いている状態を指します。上からみた状態は、以下のとおりです。
後輪
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前輪
トー・アウト(外向き)ミスアライメントの場合、両方のタイヤのトレッド内側半分に偏って摩耗します。

トー・アウト ミスアライメントによる偏摩耗
摩耗の重症度

摩耗の重症度
キャンバー角のズレ
キャンバーは、タイヤを正面から見たときの「傾き角」を指します。キャンバーのズレも、主に2つのタイプに分けられます。
ポジティブキャンバー
ポジティブキャンバーとは、タイヤの上部が外側に傾いている状態です。この場合、外側のラグに摩耗が集中します。
前から見たタイヤのイメージは、次のとおりです。
上部
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下部
ネガティブキャンバー
ネガティブキャンバーとは、タイヤの下部が外側に傾いている状態です。この場合、内側のラグに摩耗が集中します。
前から見たタイヤのイメージは、次のとおりです。
上部
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下部
トラクター以外の農業機械用タイヤにおける偏摩耗
農業用タイヤの偏摩耗は、トラクターのみに起こるわけではありません。ジオメトリやアクスル(車軸)の調整不良により、以下のようにさまざまな農業機械のタイヤにも偏摩耗が発生する可能性があります。
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トレーラー:
アクスル(車軸)の平行度のズレ・ミスアライメントによる偏摩耗が生じる可能性があります。
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コンバインハーベスター:
平行度やキャンバーのズレによる後輪の偏摩耗が生じる可能性があります。
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多関節型収穫機:
構造上、ミスアライメントの影響を受けやすく、タイヤの偏摩耗が生じる可能性があります。
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スプレーヤー(農薬散布機):
ジオメトリやキャンバーのズレにより、タイヤの偏摩耗が生じる可能性があります。
不明点がある場合、専用の測定器具を活用したジオメトリ調整やアクスル点検を実施できる専門店に相談することをおすすめします。
タイヤの交換時期が近づいている場合は、用途に合わせて特別に設計されたミシュランタイヤのラインアップをチェックしてください。