
ニーズに合わせたコンバインハーベスタータイヤの適合方法
コンバインハーベスタータイヤの調整方法
農業用車両のタイヤに関するさまざまなガイドは、以下からご確認いただけます。
コンバインハーベスタータイヤの全体的な状態を確認する
数カ月ぶりにコンバインハーベスターをガレージから出す場合、まずタイヤの全体的な状態を確認することが大切です。ひび割れや切れ目、その他の損傷がないかを点検しましょう。
タイヤの摩耗が進んでいる場合、畑で過度にスリップする恐れがあります。収穫作業の開始後にトラブルが発生しないよう、早めのタイヤ交換を検討してください。
もしタイヤの状態に不安がある場合は、迷わずタイヤディーラーや専門業者に相談することをおすすめします。
適正空気圧を適用する
他の農業機械と同様、コンバインハーベスタータイヤの空気圧管理は非常に重要です。コンバインハーベスターのような大型機械の場合、フロントタイヤ1本あたり最大15トンもの荷重がかかることがあるため注意が必要です。
空気圧が不足しているとタイヤに過度な負担がかかり、損傷につながる恐れがあります。過負荷がかかったトレッドパターンがタイヤ内部のカーカスを突き破り、タイヤの外部や内部にラジアル状の亀裂が生じることがあります。このような損傷はコンバインハーベスタータイヤの寿命を縮め、本来避けられるはずの早期の交換コストが発生しかねません。
一方、タイヤの空気圧が高すぎる場合、特に車軸荷重が大きくなる収穫期に、土壌圧縮を助長する原因となります。
では、タイヤの適正空気圧はどのように決定すればよいのでしょうか。
まずは、実際にかかる荷重を正確に把握する必要があります。そのためには、いくつかのポイントを確認し、簡単な計算を行う必要があります。
ここからは、適正空気圧を求めるための手順をステップごとにご紹介します。
(1)コンバインハーベスターの荷重の算出方法
コンバインハーベスターの適正空気圧を算出するためには、まず車体にかかる総荷重を正確に評価する必要があります。
以下のような簡易的な表を作成し、各項目を順に記入していきましょう。

表の作成例
1 - コンバインハーベスターの空車重量を決定する
最初のステップは、コンバインハーベスターの空車重量(装備品や収穫物を積んでいない状態の重量)の確認です。実際に計量するのが理想ではありますが、それが難しい場合は、コンバインハーベスターの車体に付いている銘板や、メーカーの取扱説明書などで確認できます。
たとえば、John Deere S770コンバインハーベスターの場合、空車重量は18,900kgです。
2 - ピッカー/カッターバーの重量を決定する
コンバインハーベスターに装着するピッカーやカッターバーの重量も、タイヤ空気圧を適切に設定するための荷重計算に含める必要があります。
たとえば、あるピッカーの重量は3,550kgです。
また、ピッカーは機体の前方に装着されているため、片持ち梁の原理が働きます。そのため、ピッカーの重さが車軸に与える影響は、ツールの重心と車軸ハブの中心との間にあるオフセット距離によって増幅されます。オフセットも考慮したうえで、車軸に加わる実際の負荷をキログラム単位で測定することがポイントです。
3 - コンバインハーベスターのオフセットと荷重移動を決定する
カッターバーには前方に張り出したオフセットがあるため、それに伴う荷重の移動量を計算する必要があります。正確な空気圧設定のためには、この追加荷重を把握することが重要です。
■ステップ1:オフセットの距離を測定する
まず、ピッカー(またはカッターバー)の重心の位置を見積もります。一般的には、ピッカーの取り付け位置の約1m前方を基準とし、その地点からフロントハブの中心までの距離を測定します。
この例では、オフセット距離を3.05mとします。
■ステップ2:ホイールベースの測定
次に、ホイールベース(後輪と前輪のハブ中心間の距離)を確認します。多くの場合、技術マニュアルに記載されていますが、直接測定することも可能です。
この例では、ホイールベースを3.55mとします。
■ステップ3:荷重オフセット係数の計算
荷重オフセット係数は、以下の式で求めます。
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荷重オフセット係数 = オフセット距離 ÷ ホイールベース
この例のオフセット係数は、3.05 ÷ 3.55 = 約0.86です。
■ステップ4:フロント車軸への追加荷重の算出
算出したオフセット係数を用いて、ピッカーの重量からフロント車軸にかかる追加荷重を計算します。
計算式は、以下のとおりです。
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追加荷重 = ピッカーの重量 × 荷重オフセット係数
この例では、3,550kg × 0.86 ≒ 3,053kgとなり、約3,050kgの荷重移動があると判断します。
コンバインハーベスターのフロント/リアの重量配分を計算する
コンバインハーベスターにかかる荷重を評価するうえで、フロント車軸とリア車軸の荷重配分を見積もる必要があります。
多くの機種では、フロントが70%、リアが30%という比率が目安になります。不明な場合はディーラーに確認しましょう。
この比率をもとに、各車軸にかかる荷重を以下のように計算します。
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空車重量 × 70% = フロントの荷重
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空車重量 × 30% = リアの荷重
たとえば、John Deere S770コンバインハーベスターの空車重量が18,900kgであれば、以下のように計算できます。
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フロント:18,900kg × 70% = 13,230kg
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リア:18,900kg × 30% = 5,670kg
以上の数値を記入した表は、以下のとおりです。

空車重量、ピッカー重量、ホッパー重量などをもとに、コンバインハーベスターのフロント(70%)・リア(30%)にかかる荷重を計算するための表
4 - ホッパーの重量を計算する
コンバインハーベスターのホッパーについては、通常その容量(リットル)がわかっています。これを重量(kg)に換算するには、0.8の係数をかけて計算するのが一般的です。これは、穀物の比重を踏まえた換算値です。
たとえば、容量が10,500リットルのホッパーの重量は「10,500リットル × 0.8 = 8,400 kg」となります。
コンバインハーベスターのホッパーの大部分がフロントに位置しているため、ホッパーの重量もフロント70%、リア30%の比率で分配するのが基本です。よって、それぞれの車軸にかかる重量は以下のように計算できます。
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フロント:8,400 kg × 70% = 5,880 kg
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リア:8,400 kg × 30% = 2,520 kg
これらの値を、表に追加しましょう。
5 - フロント/リアの総重量を計算する
これで必要な情報がすべて揃ったので、あとはフロント/リアの列ごとに重量を合計するだけです。

空車重量、ピッカー重量、ホッパー重量などをもとに、コンバインハーベスターのフロント(70%)・リア(30%)にかかる荷重を計算するための表
この例では、フロント車軸の総重量は25,710 kgです。
「6. タイヤあたりの総重量」は、1軸あたりの荷重を2本のタイヤで分担するという前提に基づいて、フロント車軸の総重量を2で割って算出します。
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フロントタイヤ1本あたり:25,710 kg ÷ 2 = 12,855 kg
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リアタイヤ1本あたり:8,190 kg ÷ 2 = 4,095 kg
消耗品は考慮すべきでしょうか?
炭化水素や燃料などの消耗品は、メーカーの技術データシートに記載されている空車重量に含まれていることがあります。ここでは概算を行っているため、極端な精度を目指しているわけではありません。総重量を決定するために、主な荷重に焦点を当てています。
コンバインハーベスタータイヤの適正空気圧を特定する
タイヤ1本あたりの重量がわかったら、次はメーカーの技術資料を参照して、フロントタイヤ・リアタイヤそれぞれの適正空気圧を確認します。ミシュランタイヤの技術資料はこちらからダウンロードできます。
この例で使用するタイヤは「MICHELIN CEREXBIB 2」です。
このタイヤの技術文書には、空気圧・荷重・速度の相関関係を示した表が掲載されています。これら3つの数値は密接に関係しています。(詳しくは「タイヤの過負荷を避ける方法」に関する記事をご覧ください。)
■フロントタイヤの空気圧
今回のコンバインハーベスターでは、フロントタイヤ1本あたりの推定荷重は12,855kgです。
MICHELIN CEREXBIB 2の仕様表によると、速度10km/h以下であれば、1.7kPa(≒1.7 bar)の空気圧で最大13,070kgまで対応可能です。
この数値が、性能を最大限に発揮するために38インチのフロントタイヤに適用すべき適正空気圧となります。
MICHELIN Cerexbib 2 タイヤ
VF 900/60R38 CFO+ 193A8 TL

MICHELIN Cerexbib 2 フロント空気圧
■リアタイヤの空気圧
リアタイヤについては、1本あたりの推定荷重が4,095kgでした。
MICHELIN CEREXBIB 2の仕様表によると、1.2kPa(≒1.2 bar)の空気圧で、最高速度10km/hで最大6,035kgまで対応できます。
MICHELIN Cerexbib 2 タイヤ
VF 620/70R26 CFO+ 173A8 TL

MICHELIN Cerexbib 2 リア空気圧
したがって、このコンバインハーベスターに適したフロント1.7kPa/リア1.2kPaの空気圧設定が導き出せます。

コンバインハーベスタータイヤの適正空気圧を特定する
傾斜地の特殊なケース
農地に傾斜がある場合、コンバインハーベスターの車体は完全に水平を保てず、荷重が一方の側に偏って移動することがあります。このような場合は、タイヤを保護するために空気圧を少し高めに設定しておくとよいでしょう。
空気圧の調整方法については、ミシュランタイヤの技術文書(※PDFダウンロード)の最後に記載されています。
平坦な農地での作業の場合は、推奨される空気圧を遵守してください。
フラットスポット現象
コンバインハーベスターを長期間使用せずに保管していた場合、自然に空気が少しずつ抜けてタイヤがわずかにへこむことがあります。このような場合、「フラットスポット」と呼ばれる現象が発生している可能性があります。
これは、タイヤの接地部分が地面に押しつぶされて平らになり、本来の丸い形状を一時的に失っている状態を指します。
フラットスポットはタイヤの構造的な問題ではなく、一時的な変形にすぎないため、心配する必要はありません。短時間の走行により、タイヤは本来の形状を取り戻し、振動も自然に収まっていきます。